「破片」

生者にまみれて口を開け
おろおろと立ち回るだけの
私という木偶の中に
消えてゆく言葉たち

命をもたず
定義という無為のために生起し
砕け散る言葉たち

今、私はその破片を拾い集めて
新しい世界を形づくらなければならない

人々の財布からこぼれ落ちた硬貨を
自動販売機の下に
のぞき求める地見屋のように

翳となって刻をひさぐ
せむしの悟りにも似た
晴ればれとした態度で

価値を救済するために
木偶を脱ぎ捨て
風景に同化する私は燐だ

青白く光る破片を拾う為
街にでかける